34.天の萤
作词:吉冈治
作曲:市川昭介
(セリフ)萤が好きだから、
お店の名前を《ほたるの酒场》と付けたのと、
あの娘は云ってました。
宵闇が访れると、雨の日も风の日も、
间口五尺の小店の轩さきに明りが灯る忧き世小路。
あの娘の店もそんな路地のなかばにあり…。
店闭いをしたのは年の濑だったか、
冬ざれのつめたい雨が降りつづいてましたっけ。
あそこもご多闻に泄れず地上げにあって、
栉の齿が欠けるような有ようは、
ご时世と申すもんでしょうか。
人の情が肩寄せ合うような、
マッチ箱の赈わいが、いまは怀かしい。
あの娘の名前は、しあわせの幸子。
故乡の北国へ归っていったと云う。
新宿 泪のすてどころ
ひきずるコートに 演歌がからむ
无口同士が とまり木で
邻り合ったも 缘だから
舍てておゆきよ舍てておゆきよ
こころ伤
(セリフ)しあわせも薄いのに幸子だなんて…。
故乡へ归ってまもなく、
あの娘は天の萤になったそうです。
运命とは命を运ぶことですが、
宿命とは前世から定められた命の宿り。
あの娘の人生は短い命の宿りだったのです。
この忧き世小路の片隅に、
萤の墓をつくってやりましょうか。
供养のとむらい花は、
散ることも枯れることもないネオンの花。
歌はさしずめ演歌でしょう。
都会のにごり水に萤は住めないが、
闇にほのかな明りを求めて、
人は酒という水辺を今夜も漂うようです。
萤が一つ…幸子の萤でしょうか。
ネオンの空に、天の萤が流れていった。
なになにくずれか 知らないが
からんでくれるな 不运はおなじ
どうせこの世は うたかたと
のんで骚いで 夜が更けりゃ
雨も泣くよな 雨も泣くよな
露地しぐれ
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