24.上海の街角で

作词:佐藤揔之助
作曲:山田荣一

リラの花散るキャバレーで逢うて
今宵别れる街の角
红の月さえ睑ににじむ
梦の四马路(スマロ)が怀しや

おい、もう泣くなよ。あれをごらん、ほんのりと
红の月が出ているじゃないか。何もかもあの
晚の通りだ。去年初めて君に逢ったの
も、ちょうどリラの花咲くころ、今年别れるの
も、またリラの花散る晚だ。そして场所は
やっぱりこの四马路だったなア。あれから
一年、激しい战火をあびたが、今は日本
军の手で愉しい平和がやって来た。ホ
ラ、お闻き、昔ながらの支那音乐も闻える
じゃないか。

泣いて步いちゃ人眼について
男、船乘りゃ气がひける
せめて昨日の纯情のままで
泪かくして别れよか

君は故乡(くに)へ归ってたった一人のお母
さんと大事に暮らしまえ。ぼくも明日から
やくざな上海往来をやめて、新しい北
支の天地へ行く。そこには仆の仕事
が待っていてくれるんだ。ねエ、それが
お互いの幸福(しあわせ)だ。さア少しばかりだがこ
れを船赁のたしにして、日本へ归ってく
れ、やがて十时だ。汽船(ふね)も出るから、
せめて埠头(バンド)まで送って行こう。

君を爱していりゃこそ仆は
出世しなけりゃ耻しい
弃てる气じゃない别れてしばし
故乡で待てよと云うことさ